Interview #05 レックステック株式会社 CEO・創業者 フリッヅェル・ケンダルさん / レックステック株式会社 CTO・創業者 ビルケダール・ハンスさん
SIBプログラム採択者を紹介するインタビュー企画、第5弾。
今回は、仙台を拠点に、「テクノロジーが人を支える社会」を掲げ、子ども・若者のゲーム障害や過度なデジタル依存の課題に向き合うスタートアップ、レックステック株式会社のCEO・創業者フリッヅェル・ケンダルさんにお話を伺いました。
「テクノロジーが若者を圧倒するのではなく、力になる未来へ」
ゲーム障害とデジタル依存に向き合う、仙台発スタートアップレックステック
——気づいたら昼夜が逆転していた
——学校に行くのがつらくなった
——画面の中にいる時間の方が、安心に感じてしまう
10代の子どもたちが直面するゲーム障害や過度なデジタル依存は、今や世界中で深刻な課題になっています。
レックステック株式会社が目指しているのは、問題が深刻化する「その前」に、気づける仕組みをつくること。
AIの力で小さな変化を捉え、子ども、家族、そして支援者が早い段階でつながれる社会をつくりたい。テクノロジーを、人を縛るものではなく、人を支える希望の力へ。
その挑戦を、東北・仙台から始めています。
(左)フリッヅェル・ケンダルさん
レックステック株式会社 CEO・創業者
(右)ビルケダール・ハンスさん
レックステック株式会社 CTO・創業者
企業ページ:https://rextec.co.jp/

問題が深刻化する前に「気づける環境」を
ーAI を活用した新しいスクリーニングの仕組みー
——どのような事業を展開されているのか教えてください。
私たちは、子どもや10代の若者を対象に、ゲーム障害・過度なデジタル利用の兆候を早期に可視化するスクリーニングアプリ「RexCheck」を開発しています。
ゲームやインターネットは、学びやつながりを広げる一方で、使い方次第では、学校生活や人間関係、メンタルヘルスに大きな影響を与えることがあります。
これまでの対策の多くは、利用制限やアプリのブロックなど、「使わせない」方向に寄りがちでした。でも、それだけでは根本的な解決にはならない。私たちが問題だと感じているのは、困りごとを抱え始めている子どもは多いのに、実際に支援につながっているケースがごく一部であることです
RexCheckでは、AIが行動データや回答パターンの変化から早期の兆候を捉え、保護者、教師、医療者が「いつ・どのように支援につなぐべきか」を判断しやすい設計にしています。
“問題が深刻化してから”ではなく、 “変化の入り口で気づける”こと。それが、私たちの目指す支援のかたちです。
現在は、プロトタイプ開発および初期検証の段階にありますが、実際に、教育現場や医療分野の専門家から継続的にフィードバックを受けながら開発・改良を進めてきました。今後は、実際の現場での有用性を検証しながら、より広い導入に向けた準備を進めていくフェーズに入っています。

過度なデジタル利用に揺れた10代の経験
かつての自分と同じように苦しむ子どもを減らしたい
——事業をはじめようと思ったきっかけを教えてください。
原点には、私たち自身の経験があります。
私(ケンダル)は高校時代、孤立感を抱え、長い時間をオンラインの世界で過ごしていました。共同創業者のハンスは、友人がゲーム依存によって日常生活から離れていく姿や、SNSが引き金となって人間関係が壊れていく場面を間近で見てきました。
後に、日本の子どもたちも同じような問題に直面していると知り、この課題を見過ごすことはできないと感じました。
日本留学中に訪れた医療現場では、過度なゲーム利用によって学校に通えなくなった子どもや、生活リズムを失ってしまった若者たちと出会いました。多くの家庭や学校が悩んでいるにもかかわらず、利用しやすい解決策がほとんどない。
その現実を前に、これは単なる「スクリーンタイムの問題」ではなく、心理的・社会的な構造の問題だと強く感じました。
テクノロジーと共に育った世代だからこそ、その便利さも、危うさも、両方を知っている。
だからこそ、この課題に向き合う責任があると思っています。
研究と現場、地域が近い仙台だからこそ
——なぜ、仙台で起業しようと考えたのでしょうか。
私(ケンダル)が東北大学に留学していたことが、仙台との最初の接点でした。
教育関係者や医療専門職、家庭との対話を通じて、日本におけるゲーム障害の現実を深く理解することができました。
この土地は、私たちの故郷・スウェーデンとどこか似ていて、子どもたちの課題を、腰を据えて見つめられる環境があります。
また、東北の魅力は、強い学術コミュニティと温かいローカルなスタートアップネットワークの両方が存在している点にあると考えています。大学、病院、研究機関が近く、専門家との連携がしやすい一方で、地域コミュニティとの距離も近い。だからこそ、現場で本当に役立つサービスを一緒につくっていけると感じています。

SIB伴走支援で磨かれた「社会に届くインパクト」の視点
——SIBの伴走支援を経て、どのような変化がありましたか。
SIBの伴走支援を通じて、
「この取り組みは、本当に社会に変化を生んでいるのか」
「その変化を、どう測り、どう伝えるのか」
という問いと、これまで以上に正面から向き合うようになりました。
これまでは、 課題意識や想いがあれば、きっと届くはずだと信じていた部分もありました。しかしSIBの伴走の中で、想いだけでは足りないことを、何度も突きつけられました。
誰に、どんな変化が起きているのか。それを、エビデンスと言葉で示してはじめて、社会の中で共有できる価値になるのだと気づかされました。これは、技術開発だけに集中していたら気づけなかった視点だったと思います。
また、教育者、医療者、研究者など、多様な立場の人と対話を重ねる中で、プロダクトそのものだけでなく、「どう現場に届き、どう支援につながっていくのか」そのプロセス全体を設計する視点が、少しずつ明確になっていきました。
SIBで得たこの視点を土台に、これからは事業面だけでなく、運営や連携のあり方も含めて、より強固で、持続可能な基盤を築いていきたいと考えています。
すべての子どもが、自分の人生を取り戻せるように
「テクノロジーは人のために働くべき」という揺るがない軸
——今後の展望を教えてください。
私たちが目指しているのは、テクノロジーが人のウェルビーイングを損なうのではなく、人を支えるために機能する未来です。
ゲーム障害やデジタル依存が深刻化してから対応するのではなく、「少し気になる」という違和感の段階で、自然に手を差し伸べられる環境をつくりたいと考えています。
そのために、保護者・教師・医療専門職が連携し、気づいたあとに、どう支援につなげればよいかを迷わず判断できる導線を整えていきます。学校や家庭の中で無理なく使える、エビデンスに基づいたアプローチを通じて、早期介入が特別なことではなく、日常の中で自然に行われる状態を目指しています。
最終的には、家庭・教育現場・専門職が分断されることなく、子どもを中心につながる支援の仕組みを社会に根づかせていきたいと考えています。
さらに、早期スクリーニングにとどまらず、予防や継続的な支援までを含めた取り組みへと事業を広げ、子どもたち自身が長期的に健全なデジタル習慣を身につけられる環境を整えていきたいと思っています。
今後は、子どものメンタルヘルスやデジタル・ウェルビーイングの重要性を共有できる教育機関、医療機関、研究者、支援団体との協働を広げていきます。短期的な成果ではなく、長期的な社会的インパクトを大切にしながら、丁寧な開発をともに支えてくださるパートナーとも出会っていきたいと考えています。
特に、学校や自治体との連携は、地域の中で検証と改善を重ねていくうえで欠かせないと感じています。さらに、長期的には、日本で培ったモデルを土台に、グローバル展開も視野に入れています。
「テクノロジーは人のために働くべきであり、その逆ではない」
このシンプルな軸を胸に、子どもたちがデジタルライフを楽しみながらも、ウェルビーイングと自信と自由を持ち続けられる未来、家庭や学校が自信を持ってデジタル時代を導いていける環境をつくるため、これからも挑戦を続けていきます。

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