東北から社会を変える挑戦が始まる ― TOHOKU SIBプログラム2期 キックオフ開催

東北から社会を変える挑戦が始まる ― TOHOKU SIBプログラム2期 キックオフ開催

2025年9月13日(土)、仙台市内で「TOHOKU SOCIAL IMPACT BOOSTER(SIB)プログラム2期」のキックオフイベントが開催されました。

「社会を変えるインパクトを、東北から。」を合言葉に、採択者6組7名の社会起業家が集結。半年間にわたる挑戦がいよいよ始まります。


開会の挨拶とプログラムの目的

冒頭では、主催である仙台市と、運営を担う株式会社ボーダレス・ジャパンから挨拶とガイダンスがありました。

仙台市経済局の河原氏からは、社会起業家育成にかける思いと、東北から新しい社会インパクトを生み出すことへの期待が採択者へ伝えられました。

(画像:仙台市の社会起業家育成の取り組みについて話す河原氏)

続いて登壇したボーダレス・ジャパン代表取締役COOの鈴木氏からは、インパクト創出に必要なキーワードとして「協創」が紹介されました。

従来の「共創」をさらに一歩進め、課題を“自分ごと”として同じ熱量で取り組む仲間を集める重要性が強調されました。

(画像:ボーダレス・ジャパン代表取締役COOの鈴木氏)

この半年間、採択者は講義やメンタリングに加え、同期同士での壁打ちを重ねながら、インパクトスタートアップを目指し、売上とソーシャルインパクトの両立を目指していきます。


採択者の自己紹介 ― それぞれの「WHY ME」

続いて、6組の採択者が自己紹介を行いました。

伊藤里美(株式会社Aroma Care Tech、宮城県仙台市)

緩和ケア病棟での看護師経験と、家族の闘病を通じて「もっと何かできたはず」という後悔を減らしたいと強く感じた伊藤氏。現在は仙台市内で法人を設立し、アロマケア製品を通じた新しいケアの形を模索しています。

プログラムでは、課題の原因をあらためて見つめ直し、真に解決につながるビジネスへと事業を磨き上げたいと語りました。

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沖野昇平(in the Rye株式会社、福島県大熊町)

「生まれた場所で将来が決まってしまう」教育格差の現実を変えるため、福島県大熊町で独自の教育プログラムを展開する沖野氏。地域に根差した学びの場を作り、子どもたちの選択肢を広げてきました。

これまで福島のみで実施してきた取り組みを、宮城県へと広げたいと語り、東北全体での教育格差解消への意欲を示しました。 

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服部悠大(BearBell、秋田県秋田市)

秋田県を拠点に、クマによる獣害被害を防ぐスタートアップを立ち上げた服部氏。「安全から共生へ」を掲げ、人と野生動物が安心して共に暮らせる社会を目指しています。

全国各地で深刻化する獣害問題をテクノロジーで解決し、地域の安心と未来を守る事業に挑むと力強く語りました。

平山英幸(株式会社アルゴナース、宮城県仙台市)

緩和ケア専門看護師として、すべての人が適切な医療を受けられる社会を目指し起業した平山氏。現場での長年の経験から、制度や環境による医療格差の課題を強く感じてきました。

「売上だけでなく、課題解決に確実につながる事業へアップデートしたい」と、事業の進化にかける決意を語りました。

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フリッヅェル・ケンダル & ビルケダール・ハンス(レックステック、宮城県仙台市)

自身のネット・ゲーム依存経験を原点に、日本の青少年が抱えるネット・ゲーム障害の解決に挑むケンダル氏。共同創業者のハンス氏とともに、祖国スウェーデンから移住し、仙台で起業しました。(現在、法人設立手続き中)

AIを使ったスクリーニング技術を活用し、現状の調査と原因分析を進めながら、より実効性のある事業へとブラッシュアップする計画です。

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三上拓也(Awesome Sea合同会社、青森県青森市浅虫)

コロナ禍を機にシリコンバレーから帰郷し、故郷・浅虫で起業した三上氏。障がい者就労事業所の経営をはじめ、地域産業と雇用を生み出す事業を幅広く手がけてきました。
今回は食品残渣を活用した「スマートウニ養殖」に挑戦し、地域活性と持続可能な水産業を実現する新しいモデルを構築していきます。

それぞれが語った「なぜ自分がこの課題に挑むのか(WHY ME)」には強いリアリティがあり、会場からは共感の拍手が送られました。


協創をテーマにしたアイスブレイク

講義の前には「女王蜂と働き蜂ワーク」が行われました。

一人が「女王蜂」となって知りたいことを共有し、仲間が「働き蜂」として会場を駆け回り情報を集める形式です。

テーマは何でもOKとしていましたが、「仲間集め」「集客」「販路拡大」「事例収集」などリアルな経営課題が多く、仙台市職員や事務局スタッフにも積極的に声をかける姿が見られました。

参加者からは「協創の意味を体感できた」との声が上がり、場は一気に共助の空気に包まれました。


ソーシャルビジネス講義とフィードバック

後半は、ボーダレス・ジャパンCOO 鈴木氏による「ソーシャルビジネス講義」と、アドバイザリーによる壁打ちを実施しました。

世界13カ国・50事業を展開する知見を凝縮した講義に、採択者から活発な質問が飛び交いました。

「ボーダレスの考え方が衝撃的だった」
「儲かりそうな商品から考えていた自分と真逆の発想で、新しい発見だった」
といった声がアンケートに寄せられ、期待感が高まりました。

続く壁打ちでは、各人が「社会課題の現状」「原因」「解決策」を発表。

アドバイザリーからは、

  • 「本当に心からこの課題を解決したいのか?」
  • 「商品ありきで課題を設定していないか?」
  • 「具体的に誰が困っているのか?」
    といった問いが投げかけられました。

原点を改めて見つめ直し、課題の本質に立ち返る参加者も多く見られました。


クロージングと次への一歩

最後のチェックアウトでは、全員が「今日の学び」と「半年で挑戦したいこと」を一人1分で共有。

参加者の一人からは
「一からコンセプトを考え直すことになったが、今まで感じていた違和感の正体がわかり、覚悟が決まった。」
という声があがり、事業の根幹部分を見つめ直すきっかけとなったことが伺えました。

キックオフ最後は、全員で円陣を組み、半年間の挑戦に向けて踏み出す力強い姿で締めくくられました。


まとめ

採択された6組7名は、それぞれの現場で課題解決に挑みながら、互いを支え合い成長していきます。
「社会を変えるインパクトを東北から。」
来年2月11日の成果発表会、そして東京でのミートアップに向けて、挑戦の半年が始まりました。

プログラムの様子や採択者のストーリーは、今後も記事で発信予定です。
ご期待ください。