Interview #06 Awesome Sea合同会社 代表社員 三上 拓也さん

Interview #06 Awesome Sea合同会社 代表社員 三上 拓也さん

SIBプログラム採択者を紹介するインタビュー企画、第6弾。
今回は、青森県・浅虫を拠点に、「海に頼らない新しい水産業」づくりに挑む、Awesome Sea合同会社の代表・三上拓也さんにお話を伺いました。


「海が変わっても、産地が沈まなくていい未来をつくりたい」
人工海水×完全閉鎖循環で挑む、“産食Tech”Awesome Sea

かつて豊かだった東北の海。
ホヤ、牡蠣、ホタテ、ウニ——その多くが、今、静かに減り続けています。

漁師は獲れない。
加工場は動かない。
卸は売れない。

サプライチェーン全体が、音もなく弱っていく。そんな現実が、沿岸部で起きています。

Awesome Sea合同会社は、こうした現場の痛みに真正面から向き合い、「海に依存しない水産業」という新しい選択肢を形にしようとしています。人工海水と完全閉鎖循環型の陸上養殖ユニットを使い、 “漁業を陸に上げる”ことで、産地そのものを守る。それが、Awesome Seaの挑戦です。

三上 拓也さん
Awesome Sea合同会社 代表社員
企業ページ:https://awesomesea.jp/


産地の危機に応える、新しい「陸上水産業」のかたち 
人工海水×完全閉鎖循環で、海に依存しない漁業インフラをつくる

Awesome Seaは、水産業を軸に、福祉事業・農業・観光事業・清掃事業など、様々な事業を通して地域総合商社として、青森県・浅虫の地域活性化のため日々色々な挑戦を行っています。中でも今、力を入れているのが、人工海水と完全閉鎖循環を使った陸上養殖の仕組みづくりです。

海水温の上昇や潮の変化によって、「海で育てる」「海で獲る」ことが、年々難しくなっています。それでも、海の恵みを必要としている人は、たくさんいる。だから私たちは、海をこれ以上傷つけずに、“海の栄養”を生み出し続ける方法を探しました。その答えが、外の環境に左右されない、陸上養殖でした。

現在は、ウニの育成・蓄養から人工受精までを、人工海水×完全閉鎖循環で行う技術が実証段階を終え、実際の事業として動き出すフェーズに入っています。地域の加工業者や卸と連携しながら、低コストで導入できる標準ユニットをつくり、「産地の中でちゃんと回る陸上漁業」の形を整えているところです。

将来的には、アワビ、ナマコ、ノリなど、他の水産資源にも広げていく構想があります。

この事業の主な対象は、加工業も手がけている東北沿岸の養殖漁業者です。技術も経験もある。でも、原料不足や環境変化で、もう限界が見え始めている——。そんな漁師たちが、 「海から離れても、好きな仕事を続けられる」、その選択肢をつくることが、私たちの原点です。

Awesome Seaの強みは、小さく始めても、きちんと利益が出る点にあります。産廃タンクの再利用、省エネ設計、AIやIoTによる管理などを組み合わせ、”現実的に続けられる陸上漁業”として成立させています。

そして、私たちは単なる設備会社ではありません。漁師、加工業者、卸がどう連携すれば、「育てる・加工する・届ける」が産地で完結するのか。その設計から、実装まで一緒に伴走します。福祉事業との連携、空き施設の活用、エコフィードの循環、観光や体験への展開、さらには研究機関や企業との共同研究まで、「技術・制度・商流・人をまとめて動かす産地のハブ」。それが、Awesome Seaの役割です。

「現場から静かに死んでいく」現実を前にして

青森や宮城の沿岸を歩く中で、ホヤ、牡蠣、ホタテ、ウニといった資源が次々と減り、仕事が減り、希望が少しずつ失われていく現場を見てきました。

「海から離れられない。でも、もう海が応えてくれない。」

そんな言葉を口にする漁師に出会い、陸で続ける道があるなら、それをつくろうと決めました。

また、もう一つ、大きな理由があります。
「障害を持つ娘を残して、死ねない」
それが、私の個人的な覚悟でした。

福祉と地域と食の循環が切れた瞬間、真っ先に未来を奪われるのは、弱い立場の人です。だからこそ、永続的なコミュニティと仕事を産地に残す仕組みを、どうしてもつくりたかったのです。

私は20年以上、シリコンバレーで企業法務や経営支援に携わってきました。
そして20年ぶりに、青森に戻ってきました。

世界の最前線を見てきたからこそ、世界最古の産業の危機に向き合える。
それが私の使命だと腹をくくりました。

産地の「最前線の痛み」が集まる場所で

東北の沿岸には、日本の水産業における“最前線の痛み”が最も濃く現れている場所です。

技術も文化もある。でも、危機も本物。

だからこそ、ここで成立するモデルは、同じ課題を抱える世界の沿岸地域にも通用すると信じています。

私たちは、海に縛られず、組織に縛られず、資金障壁に縛られず、
「好きな漁業を、産地で続けられる社会」をつくります。

また、私たちは「産食(さんしょく)」という未来社会モデルを提唱しています。

育てる人、加工する人、食を届ける人。
“産地でつくり産地で食す循環”が雇用・産業・交流を同時に生み出す社会です。地方には、可能性があります。
ここ青森から新たな未来を創り出し、地域から世界へと広がるビジネスモデルを実現していきたいと考えています。

「誰の痛みを最初に救うのか」を徹底的に考えた時間

水産業の現場には、痛みを抱えている人が無数にいます。漁師も苦しい、加工場も苦しい、卸も苦しい。全員を一度に救おうとすると、結局、誰も救えない。

SIBの伴走では、「それでも最初に救うのは誰なのか」「その一人が立ち上がったとき、どの構造が連動して動き出すのか」、この問いを、何度も何度も掘り下げました。

その結果たどり着いたのが、加工業も営む沿岸の養殖漁業者を起点にするという選択でした。

彼らは、海で育てる技術を持ち、加工・流通の現実も知っている。しかし、原料不足と環境変化の板挟みで、最も早く限界に近づいている存在でもあります。

まず、この一人の痛みを解ければ、加工業者が動き、卸が回り、産地全体の循環が一気に解放される。そうした加工・卸・漁師の三者がWin-Win-Winになる型が、SIBの伴走を通じて、はっきりと描けるようになりました。

いまは、この東北モデルを、「構想」ではなく「現場で回る仕組み」として、確実に社会に実装していく段階に入っています。

産地を起点に、世界へ、そして宇宙へ 
「産食」が循環し続ける未来を実装する

まずは、東北沿岸で「陸上水産業が、仕事としてちゃんと回る形」を完成させることが目標です。人工海水×完全閉鎖循環の標準ユニットと、漁師・加工業者・卸会社が連携する仕組みを磨き込み、導入すれば黒字になるモデルと、実際の拠点を確立していきます。 

次に、日本全国の沿岸過疎地への展開を見据えています。
海の環境変化や人口減少は、東北だけの問題ではありません。産地のサプライチェーンを「陸上で再起動できる共通インフラ」として整え、各地の状況に合わせて広げていきたいと考えています。

さらにその先では、海外展開も視野に入れています。輸出ありきではなく、「その土地で育て、その土地で食べる」地産地消型の陸上養殖モデルとして実装していく構想です。

事業としても、ウニにとどまらず、アワビ、ナマコ、ノリなどへと多品目化を進めていきます。これは将来的に、代替プロテインやバイオ燃料にもつながる可能性があります。

そして、時間軸をさらに先へ進めると、2050年以降を見据えた宇宙養殖があります。地上で培った閉鎖循環の技術を、宇宙という極限環境に応用し、宇宙でも“海の栄養”を現地でつくる未来を本気で目指しています。

Awesome Seaが目指しているのは、産地が、世界と宇宙の「食」を支える拠点になる未来です。私たちは、青森の地べたから、宇宙まで見ています。
でも、その出発点はいつも、目の前の一人の人生です。


「連携したい」「応援したい」と思った方へ

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2月11日(水・祝)成果発表会「東北ソーシャルイノベーションサミット」in 仙台

 ■3月12日(木)ミートアップイベント in 東京

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